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・将棋界の記録を他競技と比較1
~羽生善治をプロ野球で例える~通算編
引き続いて通算記録に関しても考察していく。通算勝星と勝率について、プロ野球のホームランと打率の記録との比較を無理やり行ってみる。
1:「1433」
将棋連盟の発足後、公式戦で最も多く勝星を残した棋士は大山康晴で1433勝。実は戦前の記録に関してはその多くが戦火によって焼失しているが、大山は自身の対局記録を詳細に記録していたためこの数字が記録として認定されている。これは最多勝レベルの年間45勝を毎年続けたとして32年かかる数字であり、引退棋士の平均勤続年数31年(独自調べ)を上回っている。片や野球界には王貞治の868本という冗談のような記録が燦然と輝いている。800本打つような選手が今後現われることはまずないだろうが、将棋界の記録は今後順調にいけばまず間違いなく羽生によって更新されるだろう。この記録の価値について考える。
【通算勝星一覧】 【通算ホームラン一覧】
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通算記録の上位40人程度を比較することにする。将棋界で表彰の対象となる通算600勝を達成した棋士は現在までに47人、上位40名の平均は805勝である。ホームラン記録の上位40名の平均は416本。どちらも一流と呼ぶには十分すぎる数字だろう。一つ覚えでこれらの偏差値を算出すると、
大山康晴氏の1433の偏差値は77.3
王貞治氏の868本は90.1となる。
少々意外に思えるほどの差が出た。思ったほど大山の数値が伸びない。原因はやはり将棋界の変化によるものだろう。大山の晩年から棋戦の数がどんどん増えて、昔よりも現代の棋士の対局数が圧倒的に増えているため勝星も稼ぎやすいのだ。
偏差値77.3を野球の記録にあてはめると2位の野村克也(71.3)を上回り、
およそホームラン720本前後の記録に相当する。
同様に将棋の記録に対して偏差値90の値を求めると
約1730勝
王貞治並みのインパクトを与えるにはこのくらいの数字を積み上げなければならない。
今後、最多記録を更新することがほぼ間違いない羽生善治はそこへ到達できるだろうか?15歳でプロ入りした羽生氏がキリよく(健康のためにも)60歳で引退したとして現役生活は45年。45年で1730勝するために必要な勝星は年平均で38、5勝。
2012年まで羽生は平均43勝しているので達成の可能性は十分にある。
【通算勝数上位5名の勝星推移】
また参考までに将棋の600勝、800勝、1000勝の偏差値はホームランの300本、400本、500本の値とほぼ同じだった。面白い偶然だと思う。
2:「1200」
最後に野球の通算打率と将棋の通算勝率を比較してみる。
将棋界で通算1200局以上対局している棋士はのべ38名。プロ野球界で打席数ランキングを上から見ていくと7000打数以上者が40名でほぼ同数のため、これらの達成難度が同程度であると考えて計算してみる。
【対局数上位者一覧】 【通算7000打数達成者一覧】
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「通算勝率が6割を超えたら大棋士の証」といったような言葉を聞いたことがあるが、一覧を見ると想像以上に難しいことだと分かる。1200局以上対局した棋士で通算勝率が6割を超えている者は僅か7名。
野球では7000打数以上で打率3割を超えた打者が5名なので「6割=大棋士」という感覚は間違ってはいなさそうだ。
では将棋界の「通算ダントツ首位打者」、羽生の”打率”はいかほどになるか計算してみよう。
1200局以上対局者の平均から割り出した羽生の勝率の偏差値は78.8
野球界の1位、張本勲氏(3割1分9厘)の偏差値は72.7
野球で偏差値78.8を算出すると、およそ3割3分6厘となる。
将来、羽生が1700勝を挙げた頃この数字がどうなっているか、非常に楽しみである。

