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最優秀棋士に関する考察2


当初は明確ではなかった選考基準

 次に各年度の受賞者が残した成績の内訳を調べ、前述の受賞条件と異なるものを考察していく。

【最優秀棋士 受賞者一覧②】

最優秀棋士 受賞者一覧②

※1977年は名人戦開催されず。



 まず第1回受賞の大山康晴である。十段のタイトルと棋戦優勝1つというのはいかにも物足りないが、十段が秋~冬に行われるタイトル戦であったこと、タイトルを奪った相手が中原誠であったこと、A級でも優勝して翌年の名人挑戦者となったこと、また50歳という年齢も選考に有利に働いたのではないかと思われる。

78年受賞の米長邦雄も同様にタイトル、優勝ともに1つのみだがどちらも冬のイベントであり(棋王戦:2月、NHK杯:3月)、A級でも3名でのプレーオフによる激戦を制して優勝するなど、年度末に強いインパクトを持たせられたことが勝因だろう。

尚、中原誠は73,78年共に3冠以上を持ちながら受賞を逃している。ライバル2人の執念に負けた格好だ。




 最大の謎選考が行われたのが第8回、1980年度の二上達也氏の受賞である。この年の二上の獲得タイトルは棋聖の一つのみで棋戦優勝、3賞受賞共になし。さらに前年度にA級から陥落しておりB級1組所属での受賞だった。A級棋士以外の受賞は初、現在まででも3人しか達成者がいない。

この年は7つのタイトル(棋聖戦は年2回)を5人で別けあうという混戦状態で、突出した成績を残した棋士がいないため票が割れたのだろうと予測されるが、それでも二上の成績が大山、米長よりも優れていたとは思えない。

賞を選考する記者も人間である。同じ成績をとった人間が2人いれば最後は好みの問題になる。二上の関係各社との関係が特別に良好だったのか、もしくは本業以外の(普及活動など)活動が評価された結果の受賞だったのかもしれない。



タイトル間に有利・不利は存在するか?

 最後に表②を元に、選考に有利なタイトル戦が存在するかどうかを見てみることにする。
タイトルや棋戦ごとに「受賞者がその年獲得した割合」を見ると軒並み45%を超えているが、「名人」と「棋聖」のみが20%代、どちらも4~6月に開催されるタイトル戦である。4月選考の将棋大賞には時間が経ち過ぎてインパクトが薄いというのは間違いなさそうだ。
一般棋戦ではNHK杯の42.5%が突出して高い。3月に行われる決勝戦、しかもテレビ放送されるとなれば納得の高評価、好印象といえるだろう。



もう「永世最優秀棋士」でいいんじゃないかな

 ここでふと、他のタイトルに比べて「王座」の率が妙に高いことに気が付く。王座といえば羽生が19連覇したことで有名な秋のタイトル戦だ。 考えてみれば40回の将棋大賞のうち羽生の受賞は19回に及ぶのである。さすがに影響力が強すぎる。

これでは「最優秀棋士に有利なトレンドは羽生」と言われても仕方がない。
そこで表①、②の結果から羽生が受賞した19年分を引いて平均をとってみる。

 

【羽生を除いたタイトル獲得率】

羽生を除いたタイトル獲得率

 「対局~棋戦優勝」までの項目は割合が減ったもの、
「各タイトル+一般棋戦」は羽生分を引いてもなお割合が高かったものを着色した。

こうして見るとやはり秋~3月にかけて行われるタイトル戦が強いことが分かる。竜王・棋王・王将の三冠に加えてNHK杯でも優勝した渡辺明の受賞は妥当どころか当然の結果だったと言えるだろう。







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