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・将棋界の記録を他競技と比較1



~羽生善治をプロ野球で例える~

 将棋の記事がニュースになることは、専門の新聞やサイト以外では滅多にない。取り上げられるのは精々「最年少」「最年長」「最多」「史上初」などが付くような記録が達成された時だけである。それはなぜかと考えると、単純に「その記録がどのくらい価値があるものなのか」という指標が足りないだけなのではないかと思う。そこで近年密かに増え続けている(と願っている)“観る将棋ファン”のため(他ならぬ自分のため)、何か有力な他競技と将棋界の記録を比較して、ある記録が将棋界においてどの程度の価値を持つのかを考察してみたいと思う。



<比較対象と方法>
◆戦後以降の記録が正確に残っており、データ管理が徹底され、かつ人気のあるスポーツということで今回は野球の記録を比較対象とする。


◆個々の比較が容易であり、将棋を観るファンにとって最も分かりやすい指標である「勝数」と「勝率」の2つに対して、“プロ野球で例えたらどの程度の立ち位置なのか”を検証する。



1:「1勝」の価値

野球の華といえばやはりホームランだろう。将棋において最も分かりやすく、かつ絶対的な価値を持つ「勝星」をホームランに例えてみる。

【歴代シーズン勝星ベスト20】 【歴代シーズンHRベスト20】

歴代シーズン勝星ベスト20 歴代シーズンHRベスト20


 プロ野球においては色々な大人の事情によって55本を打った選手が3人で最多記録であるが、将棋界では羽生善治が年間68勝という頭抜けた記録を持っている。果してこれは「55本」を超える頭抜けっぷりなのだろうか?



【年間最多勝者一覧】【ホームラン王一覧】

年間最多勝者一覧 ホームラン王一覧




 上記2図は1973年以降の最多勝利棋士と、ホームラン数の両リーグ合わせて1位だった選手のリストである。この40年間の数値を平均すると

最多勝棋士の平均は「50.18勝」
最多ホームランは「44.5本」となる。


 多少強引だが「年間50勝する棋士はホームラン45本打つくらいすごい選手」と定義する。勝数とホームランは減ることはない数字なので、増やせば増やすほど著しく難易度が上がるものではないと考えて2つの関係を単純化すると、

「HR=勝利数×0.9」


この式を利用すると
「ホームラン55本=62勝」

「68勝=ホームラン61本」となる。



 念のためこれとは別の数値でこの計算を検証する。上記2記録の偏差値を算出すると

全体に対するホームラン55本の偏差値は「68.4」
対して将棋の最多である羽生の68勝の偏差値は「75.8」とかなり隔りがある。

ホームラン記録における「偏差値76」を算出するとおよそ「61」

勝星記録における「偏差値68、4」に最も近い数値は「63勝」となる。


とりあえず整合性は取れていると思う。



【結論】

【偏差値によって算出した相関図】

偏差値によって算出した相関図



年間68勝の更新はホームラン61本に匹敵する難関。






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